桃「ふんっ……! 開かない…完全に呪いで閉じられてる、内側からじゃ開けられないな…」
杏里『二人ともー! 大丈夫かー?』
シャミ子「杏里ちゃん! 大丈夫ですー! でも扉が開きませんー!」
杏里『ほんとにびくともしないな、どうなってんの…』
ミカン『二人ともぉぉ…ごめんなさいぃぃぃ……』グズグズ
先生『鍵の業者さんに連絡してみたんだけど、人手が足りてないせいで来れるのは明日の朝になるみたい…』
シャミ子「えっ」
桃「えっ」
桃「……それってつまり、私たち明日までここに閉じ込められたまま?」
先生『そうなりますね…』
ミカン『ごめんなさいぃぃ…ほんとごめんなさ゛いぃぃぃ…』ブワッ
杏里『うわっ、ちょっ、なんか飛んできたっ! 痛っ! 熱っ!? えっあっつ!!』
先生『まあとりあえずそこにはお手洗いもあるし、必要そうなものは高窓から投げ入れますねー』
ミカン『ぐずっ…うぅ…私ってばいつもいつも……ぅぅ……』
杏里『おおよしよしー…どうどう…落ち着けー落ち着けよー』
杏里『もう遅いから私たちも帰れってさ、頑張れ二人ともー!』
ーーーーーーーーーー
シャミ子「とはいっても明日までこのまま……どうしましょう?」
桃「どうするも何も、大人しく待ってるしか…」
桃「シャミ子、体育倉庫にいたけど、体育の授業中だったの?」
シャミ子「はい、体育の後片付け中に閉じ込められたので体操着のままです… 桃はなんでここに?」
桃「帰ろうとしてる時に片付けしてるシャミ子見つけて、声掛けようとしたら突然突風に見舞われて…何かと思えばミカンがいて…」
桃「というか、なんでミカンが学校にいたのかな。転校はまだ先だよね」
シャミ子「見学で校内を案内してもらってたみたいですよ」
桃「……ん、ラインが入ってる?」
[杏里『密室で一晩ふたりきり! むしろこれチャンスじゃね!? がんばれちよもも!!!』]
桃「!!」ブチッ
シャミ子「桃? なんでスマホの電源切ったんですか?」
桃「えっ、いや、緊急時の為にスマホの電池は温存しようと思っただけだよ! 他意はない!」
桃(いやいやいや! これは事故であった私にもシャミ子にも不本意な状況であって!)
桃(別にそんなんじゃない! ちょっと期待とかしてない!)ソワソワ
シャミ子「もう日が暮れてきましたね」
桃「シャミ子、真っ暗は大丈夫? 灯りもないし怖かったりしない?」
シャミ子「大丈夫です、お子様じゃあるまいし。まぞくは闇属性なのでむしろパワーアップだ!」
シャミ子「あっ、でもさっきランタンを投げ入れていただきました。これを点けて一緒にいただいた晩ごはんも食べちゃいましょう」
桃「晩ごはん…カロリーメイトか…」
桃「……しかもチーズか…」
シャミ子「口の中がモソモソします」モグモグ
桃「水も貰ってるとはいえこれだけか…カロリーメイトはおかずにならない、夕飯に食べる物じゃないな」モグモグ
シャミ子「桃も普段はジャンクな食事ばっかりじゃないですか。カロリーメイトさんも文句言われる筋合いはないと思ってるに違いありません」
桃「まあそうだけど…こんな状況になると温かくて舌触りの良い食事が恋しいなって」
桃「そうだ、明日帰ったらご飯作ってよ。温かいうどんがいいかな」
シャミ子「勝手に決めるな! じゃあ明日は帰りにスーパー寄って荷物持ってもらいます!」
桃「ついでに作り置きもお願いするね」
シャミ子「……ここ、夜になるとちょっと冷えます」
桃「シャミ子体操着だもんね。毛布も貰ってるし羽織っときなよ、ほら」
桃「……って、あれ? これ一枚しかなくない?」
シャミ子「えっ」
桃「…まあ、私は制服だし、普段から厚着してるから大丈夫だよ。使っていいから」
シャミ子「え、でも…」
桃「明日のうどんを食べる前にシャミ子に風邪をひかれる方が困る。遠慮とかしないで、ほら」ファサ…
シャミ子「あ、ありがとうございます…」…ポッ
桃「……」
シャミ子「……」
桃(なんて格好つけたものの…けっこう冷えるな……正直寒い)
桃(いや、シャミ子の為だし、これくらい我慢しないと)
シャミ子「……」
シャミ子「……桃、あの」
桃「ん? どうかした?」
シャミ子「その、よければ…毛布、一緒に入りませんか…?」カァァァ…
桃「……え?」
シャミ子「か、勘違いするなよ!私が毛布一枚じゃ足りないくらい寒いだけだからな! 別に心配とかじゃないからな! もし風邪引かれてもうどんは作るからなっ!」
桃「…………」
シャミ子「…あ、いや、イヤだったらいいんです、いいんです」
桃「…いいの?」
シャミ子「……えっ、も、もちろんです!」
桃「……ほんとに??」
シャミ子「…なぜにそんなに疑り深いんですか」
桃「……ほ、本当に期待はしてなかったから!」
シャミ子「きたい? なんの?」
桃「じゃ、じゃあ失礼して…」スッ…
シャミ子「ど、どうぞ……」
桃「……」
シャミ子「……」
桃(ち、近っ…! シャミ子ちっかい!)カァァァ
シャミ子(桃、近い…いい匂い……あったかい)ポッ…
桃「……」ソワソワ
シャミ子「……」テレテレ
シャミ子「あ……自分で誘っておいてなんですが、体育の後だしお風呂入ってないしで、私臭くないか…」
桃「そ、そんなことないよ、むしろ落ち着く匂いだよ! 安らぎって感じの匂いがする!」
シャミ子「食い気味でこっ恥ずなこと言わないでください!」
シャミ子「…………」
桃「…………」
桃(……やばい、顔熱い、今日おかしい絶対…)
シャミ子「…………」
桃「……あ…シャミ子、肩出てるよ」スッ
シャミ子「ちょっと短いですね、この毛布」
桃(……)
桃「シャミ子、冷えちゃうよ。もっとこっち来なよ」グイッ
シャミ子「わひゃあ! もっ、桃!?」
桃(これは決してやましい考えではなく! 体冷やしたら良くないから…)
桃「変な我慢しなくていいから……ほら、もっと近づいて?」
桃(平常心だ…平常心を持て…)
シャミ子「は、はぃい…」カァァァァァ!
桃「もっと寄って大丈夫だから、遠慮しないで」
シャミ子「はい…」
桃(平常心、平常心……やましいことはない…何一つない……あっやわらかい……やましいことはない)
…ピトッ
桃「……!?」
桃(……これもう体が密着してる…? ほとんど抱きついてる!?)
シャミ子「あ、その…二人でくるまるにはこれくらい近づかなくちゃで…」
桃「…ほ、本当に小さいね毛布」
シャミ子「…そ、そうですね」
桃「…大丈夫? 嫌じゃない?」
シャミ子「嫌じゃないです、あったかいです」
桃(シャミ子…体操着だから服が薄くて、なんか…いろいろ伝わる…ヤバい)
桃「…………」
シャミ子「……桃っ」
桃「……ん?」
シャミ子「…こんなこというの、良くないかもですけど……一緒に閉じ込められたのが、桃でよかったです」
桃「…………え」
シャミ子「こんな暗くて寒い倉庫に一人だったら、私、心細くて絶対泣いてました」
シャミ子「それに…一緒だったのが桃じゃなかったら、こんなに安心できなかったです」
シャミ子「一人きりじゃなくて、それに桃と一緒で、二人で…本当によかった…って……」カァァァ…
桃「っ……! けっこうストレートに恥ずかしいこと言ってくるね今日は…」
シャミ子「お、お互い様です! 今日は小細工なし真っ向からぶつかってやります!」
桃「………」
桃「…私だって、シャミ子を一人になんてしないよ、絶対」
桃「どこかで一人きりになってたって、私が必ず見つけるし、一人にしない」
桃「…ほら、いずれは眷属になるわけだし」
シャミ子「……」
シャミ子「ねえ、桃……」
シャミ子「…………それだけ?」
桃「えっ…」
桃「……それだけ、じゃない」
桃「……」
シャミ子「……」
桃(音ひとつない深夜の倉庫で、抱き合って、互いの心音だけがうるさい位に聞こえて…)
桃(…多分、完全に雰囲気に突き動かされてる)
桃(…でも、ここで…伝えよう)
桃「私は……シャミ子のことが────」
シャミ子「ちゅ……ん、っ……ぅ…………ぷはっ」
桃「……っ、はぁ…………キス、しちゃったね」
シャミ子「…………ぽへー……」
桃「シャミ子? ……大丈夫?」
シャミ子「はっ…すみません、頭の中ほわほわしてました。こういうの、初めてだし…」
桃「私も初めてだし、全然勝手がわからないんだけど…シャミ子とだから、こんなに気持ちいいんだろうね」
シャミ子「は、恥ずかしいこと言わないでください…っ! 桃やっぱりいつもと違う!」
桃「ああうん…雰囲気と状況で変なテンションになってる自覚はある…」
桃「やっぱり今の私、おかしいかな…ちょっと冷静になって……」
シャミ子「……ちゅ、っ」
桃「!!?」カァァァ
シャミ子「ふふふっ……ど、どうだ、魔法少女よ……不意打ちう食らわせてやったぞっ……」カァァァ
シャミ子「…私も、なんだか変になってます…でも、二人とも変なので、今は気にしなくていいやって…思います」
シャミ子「だから……もっと、して」
桃「うん……一度じゃ足りない」
─────
───
─
シャミ子「…今何時でしょうか…?」
桃「あ、スマホ切っちゃってたからわかんないや」
桃「もうけっこう遅い時間かな、日が暮れてからずっと……その、いろいろあったし」
シャミ子「ん…そうですね……」ウトウト
桃「眠い?」
シャミ子「……今寝たら、もったいないです……こんなに二人きりになれること、なかなか無いから…」ウトウト…
桃「…我慢しなくていいよ」
シャミ子「でも、もうちょっと…」ギュッ
桃「……うん、もうちょっとだけ、こうしていようか」ギュッ
チュン チュン…
杏里「お二人さんおっはよー! ゆうべはお楽しみでしたかなー?」ガラガラガラガラ
シャミ子「あ、杏里ちゃん、おはようございます」
桃「やっと開いた、これで帰れるね」
杏里「なんだー開けたら二人の距離感がグッと近づいていて…みたいなの期待してたのに」
シャミ子「な、何を言ってるんですかっ!」カァァァ
桃「……いいから早く帰ろうか、うどん食べたいし…」
杏里(シャミ子顔真っ赤だし、ちよもも目線合わせないし、分かりやすいな二人とも…)
杏里(あらら、首筋に赤い跡が……隠せてないぞー二人とも)
杏里(まあ、私は空気が読める系女子なので気付かないフリをしてあげよう! おめでとう二人とも! 冷やかすのは今度にしてあげるよ!)
シャミ子「ところで、ここに来たの杏里ちゃんだけですか?」
杏里「ああ、業者さん今日も予約いっぱいで大忙しらしくて、急いで帰っていったよ。あの呪いのやべー子もすぐ来るんじゃない? 迷惑かけないために気分を落ち着かせてから来るって」
ミカン「シャミ子ー! 桃ー!」
シャミ子「あっ、ミカンさん!」
ミカン「本当にごめんなさい二人とも! 私のせいでまる一晩…なんて謝ったらいいか…」
ミカン「…って、あら……?その首筋の赤い跡……!?」
ミカン「えっ!? ちょっと!! 夜の学校で何してたのあなたたち!!! というか付き合ってるのっ!!? 一夜の間に何があったの!!?」
ゴゴゴ…
ミカン「あ、いや、こんなこと言いたいんじゃなくて…ま、まずはおめでとうよね! そうよね!二人のことは祝福しないとよね!! いやでも! 学校で!! 体育倉庫で!!? 初めてでしょ!? ファーストでしょ!!!? 友達二人がこんな…不純同性交遊を…!!」
ゴゴゴゴゴゴ……
杏里「あああっ! 倉庫の扉がぁ!?」
ガチャン!!
桃「」
シャミ子「」
桃「…………は?」
シャミ子「…………えっ?」
桃「……開かない」
シャミ子「………………えぇ…」
頑張れシャミ子! 密室には信頼や依存関係を築きやすくするちょっとアブない効果があるらしいぞ!
おわり
あとミカン入学前の授業となるとと夏休みまでの7月だけど寒いうんぬんは今年冷夏だったし許して
引用元: http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1571663190/