とある事務所
魔法少女A「…」
シャミ子「どうぞここにかけてください。あ、すみません、なにも出さずに」
シャミ子「ええと、今、お茶をお持ちしますねっ…、ってあっ」ガッチャーン
シャミ子「す、すみませんっ、床にこぼしてしまってっ、い、今入れなおしますからっ」
シャミ子「ほ、ほんとすみません。普段はこういうことは、良に…、あっ、妹に頼んでるんですけど、いまは出払ってて…」
魔法少女A「…」
シャミ子「はー、やっと入れなおすことができました。どうぞどうぞ」
シャミ子「それで、えっと、えっと、その、あなたの依頼内容なんですけど。事前にメールで送ってくれてましたよね?」
シャミ子「たしか、あなたの相方の魔法少女の子が眠ったきり目覚めなくなったっていう相談で」
魔法少女A「そうですけど…、けど、あの、わたし、帰りますね」
シャミ子「えっっっっ!」
シャミ子「な、なんで!?なんでですか、…わたしのホームページ見て、はるばる来てくれたんですよねっ!? わたしに依頼するためにっ!」
魔法少女A「そうですよ…、『まぞくか魔法少女の方で、何かお悩みの方、なんでも解決いたします』ってなことホムペに書いてたから、来てみましたけど…、もう帰ることにしました」
シャミ子「な、なじぇっ!わ、わたし、まだ何もしてないのにっ!」
魔法少女A「何もしてないだなんて…、雰囲気と今の所作をみてもうわかりますっ! 見るからにおっちょこちょいでドンくさそうっ!」
シャミ子「ええっ!?」ガアン
魔法少女A「それに歳もわたしと同い年くらいの、高校生でしょ貴方っ! なんで学校にも行かないでこんな事務所開いてるのっ!? 信用できないわっ」
シャミ子「え……、あ、あの、わ、わたしこう見えてもう………、23歳…」
魔法少女A「え!?」
シャミ子「………、平日はOLしてます…、この仕事は休日だけで…」
魔法少女A「なお信用できませんっ、見た目幼すぎて人生経験なさそうっ!」
シャミ子「ひいっ…!」ガアン
シャミ子「あ、あのもう…、その辺で…、わ、わたしのメンタルライフがあとちょっとで0になりますからそれ以上は…」
魔法少女A「それに何より…、その立派な角っ……、あなた、まぞくじゃないですかっ! 魔法少女の天敵である貴方に、わたしの相方の体を預けることなんてできませんっ!」
シャミ子「え…?って…、あ、あの、ちょっと待ってっ!」
魔法少女A「だから帰るっていったでしょ!」
シャミ子「だ、だから待ってくださいっ!相方の方のその症状…!まぞくの仕業でしょう? それは、放っておくと命のかかわる症状なんですっ、だからちょっと待って…!」
魔法少女A「えっ……?」
魔法少女A「なんでわかったの…?まぞくの仕業だって…?そんなことまだ一言も…」
シャミ子「そ、それは、わ、わたしも同種のまぞくだからですっ…、きっと、相方の子は夢魔によってずっと夢を見続けてる状態にあるんですっ!」
シャミ子「わたしならきっとその子を目覚めさすことができますからっ、だから、帰らないでっ」
魔法少女A「……」
リリス「シャミ子の言うことは聞いておいたほうがいいぞ、半人前の魔法少女よ」
魔法少女A「わっ…、銅像がしゃべった!?」
リリス「確かにお主が言うようにシャミ子は、いまだにドジでおっちょこちょいでドンくさくて運動神経0で見た目高校生ですぐ泣くしあきらめも早いが…」
シャミ子「ごせんぞ…、この方にそこまで言われてないですけど」
リリス「だがシャミ子は、今や様々な経験を踏んで、総合的にみればすっかり上級のまぞくと同等の力を持っているといっても過言ではない」
リリス「とくに、夢魔がかかわる症状の分野ではエキスパートといっていい。こやつ自身の夢魔の力を使えば、その気になればお主を瞬殺することだってできるしな」
魔法少女A「えっ…」
シャミ子「ご、ごせんぞっ、変なこと言わないでくださいっ、そんなことしませんからねっ」
リリス「まあ、せっかく来たのだし、事情くらい話してみせよ。ちゃんとその相方の子も連れて来てるのだろう?」
魔法少女A「…」
………
魔法少女B「すう…、すう…」
魔法少女A「ときどき笑ったり、悲しそうな顔をしたり、ドキドキした顔したり、苦しそうな顔するけど…」
魔法少女A[ゆすっても何しても起きないの…、数週間前からずっと…、まぞくとの闘いで攻撃を受けたことは初めてじゃないけど…、こんなの初めてで、どうしたらいいか」
リリス「どうだ、シャミ子」
シャミ子「バラエティに富んだ夢をエンドレスで見させられてる感じですかね…、過去の記憶だったり、オリの夢物語だったり…それでいろんな表情になってるのかな」
シャミ子「ええっとそれで、この相方の子が目覚めなくなった経緯ですけど…」
魔法少女A「…」
魔法少女A「…、それは、さっきも説明したとおもうけど…」
シャミ子「まちで突然、この子がまぞくに襲われて目覚めなくなったって…、ほんとにそれだけ…ですか?」
魔法少女A「なによ…、そうだって言ってるでしょ。それで、どうなの、貴方に治せるの…この子の症状を……!」
シャミ子「ええっと、そですね」
魔法少女A「えっ!?」
シャミ子「え…?あ、ああっ…!!、ちょ…そんな驚いた顔でまじまじと、みないでくださいっ…」
シャミ子「その…、一応これがわたしの戦闘フォームというか…、なんていうか…、ちょっと露出度が高いですけど…あ、やっぱ変ですか!変ですよね、わたしもそう思いますっ! 聞きましたか、ごせんぞっ!」
リリス「何年やっとるだお主はっ、いい加減、余の考えた戦闘フォームになれんかっ!」
シャミ子「なれませんっ、こんなものっ!」
魔法少女A「(…え…え?)」
魔法少女A「(……、いや…恰好がどうこうより、……、いつの間に変身したの…?)」
魔法少女A「(魔法少女の場合は、レベルの高い者ほど、変身が速いっていうけど…、ひょっとしてこの人、ほんとに上級のまぞく…?)」
シャミ子「ああ、それであのぅ…」
魔法少女A「え…!?、あ、はいっ」
シャミ子「治せるので安心してくださいね」
魔法少女A「えっ…?」
シャミ子「治せますから、この子のこと」
シャミ子「この子の夢の中にもぐって、ちょっとアレコレしてから、それから、起こしてきます。すぐすみます」
魔法少女A「え…え…、ほんとに…、なお…せるの?この子のこと…」
シャミ子「ええ…、だからあの、そんな不安そうな顔しないで」
シャミ子「ちょっとだけ、待っててね」
………
スポンサーリンク
………
魔法少女B「う……ううん…、こ、ここ…は?…えっ」
魔法少女A「ううっ…、うううっ…!ほんとに…ほんとによかった…」
魔法少女B「ちょ…、どうしたの…?そんなに抱きしめられたら…痛いよ…、けどわたし…いったい…」
リリス「いや早いな。ものの10分で終わらせたな」
シャミ子「いやまあ、アレコレして、夢にお邪魔して起こしてきただけですからね。ゴタゴタで筋肉注射くらい痛い目にあいましたが、朝飯前です」
魔法少女A「あ、あああ、あのっ…、わ、わたし…!なんてお礼したらいいか…、あ、ありがとうございます…、それでお代金はっ」
シャミ子「そんな…、お礼もお金もいりません」
シャミ子「ただ…、これからは、あなたの町にいるまぞくの方々ともっと仲良くしてもらえると…助かるというか…えっと」
魔法少女A「え…?」
シャミ子「ごめんなさい…、実は、その子の夢の中に入ったとき…、過去の記憶を少し拝見しちゃいました…、そんなに見るつもりはなかったんですけど…」
魔法少女A・B「……」
魔法少女B「ごめんなさい…、もともとは私たちが悪かったんです…、まちで静かに暮らしてるまぞくを私たちがポイント欲しさにやっつけようとして…」
魔法少女A「け、けどそれはっ…、まぞくをやっつけることがイイコトって、魔法少女になったとき聞かされたもの…、ナビゲーターに…闇の一族は昔から世界に害をなす存在だって…」
リコ「シャミ子はーん」
魔法少女A「え…?」
シャミ子「あれ?リコさん。それにみんなも。突然どうしたんです?」
リコ「あれ、なんや生意気そうな魔法少女が2人も…、ま、いいわ」
リコ「あんなー、うちのフィアンセがな、料理作りすぎちゃって。よかったら、夜ご飯、一緒どうかなって。みんなも誘っといたし、一緒に行こうや」
白澤「リコ君。だから僕は百歩譲って君の彼氏であってもフィアンセではなくて…」
ミカン「仕事帰りにわたしもさっきそこで誘われちゃったわ、あら?シャミ子お仕事中??お邪魔だったかしら?」
小倉「大学の研究切り上げてきたよー、シャミ子ちゃんも行こうよ」
杏里「わたしも誘われたよっ、いこーぜシャミ子っ」
シャミ子「みんな…」
魔法少女A・B「なっ…」
魔法少女A「まぞくに魔法少女に…、それに…?そんな…こんなごった煮の空間が存在するなんて…」
魔法少女B「噂には聞いていたけど…こんなことが…」
リリス「そうだ。ここは、光と闇の勢力争いの中立地帯、せいいき桜ヶ丘。両勢力が、それはもう、なあなあに共存してる場所だ。なあ、シャミ子」
シャミ子「ええ、まあ…」
シャミ子「けど、外の町ではまだまだ、光と闇の一族同士での争いをしてる地域もあるみたいですから…」
シャミ子「もっとお互いが仲良くなれるようにってことで、わたしはこうして、両サイドのお悩み相談室を開いてるわけです」
シャミ子「まあ、みんなが仲良くなってくれるのが、わたしのモットーですからね」
魔法少女A・B「…」
リリス「まあまあ、長年生きてきたけど、光と闇の一族の関係もようやく、最近になって、なあなあでイイ感じにいい加減な関係になってきた感じもするな」
リリス「まあ、とはいえ、のほほんと両勢力の共存を祈るシャミ子に対して…」
リリス「シャミ子の相方なんかは、今だ争いが絶えない地域に直接赴いて、時にくそ下手な説得で、時に無理くり筋肉で止めようと、まだまだアクティブに奔走中だけれどな」
シャミ子「なっ…、あ、相方ってなんですか、あ、相方なんかじゃないですっ…あんな人っ…」
リリス「なんだ?23歳にもなってまだ、恥ずかしがってるのか…? どうしようもないやつだな、お前も…、ていうか顔真っ赤だぞ?」
シャミ子「な、なにいってんですかごせんぞ、ち、違いますから…、…んっ?」ピロリン
シャミ子「……………、っえ!!??」
魔法少女A「?」
コ「なー、シャミ子はん、行こうや。久しぶりにみんなで宴会や。場所は…」
シャミ子「ご、ごめんなさいっ、わ、わたし…今日は急用ができちゃって…! は、はやく事務所も閉めて家に帰らないと…っ!」
ミカン「どうしたの、突然…、あっ…まさか」
杏里「なんだー、つれないなシャミ子。あーー、ひょっとして、久しぶりにダンナが家にかえってくんのか?」
魔法少女A「ダンナ…?」
シャミ子「ち、ち、違いますっ!ダンナなんかじゃありませんっ!!」
リコ「あーなんや。今日、帰ってくるんかいな。放浪癖のあるフィアンセをもつと振り回されて大変やな、シャミ子はんも」
小倉「あー、なんだ、それじゃ仕方ないね~」
シャミ子「ち、違っ…!」
シャミ子「だ、だからっ、相方でもダンナでもフィアンセでもありませんっ!」
シャミ子「あれはっ……、宿敵っ!」ダッ
リコ「ああ…、いってもーた…」
ミカン「一緒に2人もくればいいのに…、まあ、今夜は久しぶりに2人きりのほうがいいのかしら?」
ミカン「あ、そうだ、代わりと言ったら悪いけど…、あなたたち、一緒に来ないかしら?」
魔法少女A・B「……」
魔法少女A「いや…遠慮しておきます。それより、早く自分たちの町に帰らないと」
魔法少女B「そうね…、、傷つけようとしたまぞくにちゃんと謝って…、それから…、これからは、町にいるまぞくとも仲良くなるように努力してみる」
リリス「ああ、そうだな。それがいい。道中、気を付けて帰るのだぞ。それで…帰ったら、みんな仲良くな」
……
スポンサーリンク
タッタッタ…
シャミ子「はあ、はあ…!」
シャミ子「桃っ!」バンッ
シャミ子の家…
桃(23歳)「あ、お帰りシャミ子」
シャミ子「き…、き…」プルプル
シャミ子「き、き…貴様というやつは…!!」
桃「え?どうしたのシャミ子…、あれ、なんか…、怒ってる?」
シャミ子「あ、あったりまえですっ!半年ぶりに帰ってきたと思えばっ! ちょこちょこ連絡送っても8割既読スルーのくせにっ!何突然帰ってきてるんですかっ!」
桃「え…、帰るって事前に連絡したと思ったけど」
シャミ子「ついさっきみましたよそんなもんっ! 今日帰るからっ、てか今帰ってる最中とか…連絡よこすの遅すぎなんですよっ!」
シャミ子「てかもう帰ってきてるし!」
シャミ子「それでっ!?今まで何してたんですかっ」
桃「あーしんどかった。うん、やっぱり、北の地方は、まだまだ魔法少女とまぞくとのガチの抗争やってるから止めるの大変だったよ…」
桃「みんなの言いつけ通り、なるべく筋肉は使わずに抗争を止めたよ。なるべく言葉で説得して…、あ、けど最後はちょっとイラっとして筋肉でちょっとだけほんのちょっとだけ」
シャミ子「聞いてねーですよっ!!」
桃「ええ…?」
桃「ああ、それならもういいよ。はいこれ北の地方みやげ。みんなの分もあるよ。それと、…きゃっ…」
シャミ子「か、帰ってくるなら来るって、もっと早く行ってください、バカ…!!」ギュウ
シャミ子「けど…、あ、会いたかったです…、桃。お、おかえりなさい……でした」
桃「…ん。わたしも…、ずっとシャミ子に会いたかった…、ただいまシャミ子」
シャミ子「うん…」
シャミ子「ところで桃…、さっき何を言いかけたんです?」
桃「え…?ああ、それと」
桃「今日のご飯何かなって…」
シャミ子「……」
シャミ子「…何年も何年も言い続けてますが……」
シャミ子「わたしは飯炊きまぞくではないっ!けど準備はこれからですっ!」
シャミ子「それで!!?何系が食べたいですかっ!!」
おしまい
シャミ子頼もしくなっても桃相手には変わらないのめっちゃ良い
ちゃんと努めを見つけてそれを果たしてるあたりが大人になったなって
なのはとフェイトみたくなった