シャミ子「もっ、桃!」
桃「ん? どうかした?」
シャミ子「もうすぐ冬休みですね!」
桃「? そうだね?」
シャミ子「く、クリスマスですね!」
桃「そうだね」
シャミ子「というわけで! クリスマスに、一緒にで…デー……出かけませんか!?」
桃「えっ」
シャミ子「ほら、冬休みだがら学校もないし! せっかくですし!」
桃「…………」
桃「……うーん……」
シャミ子(…あれ? あんまり反応がよろしくない?)
桃「……家でよくない?」
シャミ子「…は?」
桃「というか寒いし、人も多いし、なんかそこら中浮わついてるしわざわざ出かける意味もなくない?」
桃「それよりもクリスマスはシャミ子の作るごちそうを食べて、家でゆっくり過ごしたい。うん、それがいい。 そのままシャミ子の茹でたそばで年を越して、シャミ子の作ったおせちでお正月を迎えるんだ。うん、それがいいと思う。そうしよう」
シャミ子「……」
桃「というわけでシャミ子、クリスマス楽しみにしてるね」
シャミ子「……きさまぁー!! そういうとこだぞー!!」
桃「えっ」
シャミ子「ぽこーー! もう知りません! 桃のにぶちん!!」ダッ
桃「あっ、シャミ子……!」
桃「……」
桃「……はぁ」
ーーーーーーーーーー
シャミ子「……ってことがあったんです」ムスー
ミカン「ないわね。あんまりだわ!」
シャミ子「全くです! 前の果たし状の時は何を勘違いしたかあんなにおめかしして来たのに! なんで今回は食い付いてこないんですか!?」
ミカン「その時は桃ったら、家でかつてなくソワソワしてたのよ? なんでちゃんと誘った時に限って、こんな鈍いのかしらね!」
シャミ子「もう桃はコンビニのチキンを食べながらクリスマスを過ごして、カップそばで年越しして、通販の炎上したおせちでお正月を過ごせばいいんです!」
シャミ子「……せっかく、勇気だして誘ったのに」
シャミ子「これじゃ、初クリスマスおでかけ作戦が台無しです……ミカンさんも協力してくれたのに」
ミカン「そういえば……以前からだけど、桃ってクリスマスとか、この時期になると、どうも普段よりノリが良くない気がするわ」
シャミ子「えっ、そうなんですか…?」
ミカン「魔法少女たちで集まってクリスマスパーティーやるって言っても絶対に来なかったのよね。 ひょっとしてクリスマスが嫌いだったりするのかしら?」
シャミ子「…………クリスマス…この時期……桃」
シャミ子「………あっ…」
ーーーーーーーーーーー
ガチャ
桃「……あ、シャミ子…」
シャミ子「……」
桃「……あの、さっきはごめ……」
シャミ子「ごめんなさい…!」
桃「えっ……?」
シャミ子「私、無神経でした。クリスマスって、その……桃にとっては……」
桃「……」
シャミ子「……桜さんがいなくなって、一人になっちゃった時期だから……」
桃「……それは」
シャミ子「そんな時に出かけようとか…私、浮かれてました……ほんとに、ごめんなさい……ううっ…ぐす…」
桃「…泣かないでよ、シャミ子は何にも悪くないんだから。 あんなこと言った私が悪かった」ナデナデ
桃「……それまでのクリスマスはさ、毎年姉と一緒に楽しくやってたんだ。 ミカンとか、他の子も呼んだりして」
桃「でも、10年前……私は別の町にいて、姉は迎えにこなくて…それから…」
桃「だから、積極的に遊びにいく……みたいな気になれなかったんだ。 もう10年も前なのに、未だに引きずって」
シャミ子「…………」
桃「……でも、今はもう、姉の居場所はわかってるし…何より今年は一人じゃない」
シャミ子「え……」
桃「シャミ子と初めて過ごすクリスマスだし、もうちょっと前向きにならないと勿体ないよね」
シャミ子「……桃!」
桃「……シャミ子。迷惑かけちゃったけど…もし私で良かったら、一緒に遊びに行きたいな」
シャミ子「…はいっ! はい! 行きます! ぜひぜひ行きます!」
シャミ子「私も、小さいころはクリスマスはずっと病院だったし、退院してからも家にいたことしかなくて…」
シャミ子「だから、元気になった今年は、桃と一緒にお出かけしたいなって思ってたんです! えへへ~」ニコーッ
桃「そ、そっか…」テレテレ
シャミ子「というわけで、当日を楽しみに待っていろ魔法少女! 完璧なデー…じゃなくてお出かけプランを考えて来てやります!」
桃「うん、楽しみにしてるね」
桃(クリスマス、シャミ子と一緒…外出…)
桃(……変な期待はなし…! シャミ子は純粋に楽しみにしてるんだから!)
ーーーーーーーーーーー
シャミ子「桃ー! もう来てたんですか?」
桃「ああシャミ子、うん、ちょっと早く家出ちゃって」
シャミ子「すみません、ランチタイムにバイトが入っちゃって…」
桃「この時期は忙しいみたいだからね、仕方ないよ。 イルミネーションには間に合うみたいだし大丈夫」
桃「駅で待ち合わせってことは、町の外に行くってこと?」
シャミ子「はい! ミカンさんと相談して、都会の方に行って見るのはどうかって」
シャミ子「クリスマスはイルミネーションとかイベントもあるみたいです。 普通ならまぞくは危険もあるけど、桃もいるし安心だろうからって」
桃「ミカンは実家で、杏里の肉屋は書き入れ時だし、良ちゃんも友達とクリスマス会か…」
桃「ふ、二人だけ…だね」ソワソワ
シャミ子「そ、そうですね…」ソワソワ
桃「…それで、せいいきの外にそのまま出るつもり?」
シャミ子「? そのままとは?」
桃「……ほら角、そしてしっぽ」
シャミ子「あっ」
桃「本当に気付いてなかったか……そのままで外に出たら、私は魔法少女さん達の的ですよ、って言ってるようなものだよ」
シャミ子「うっ、そうでした…普通の町では角生えてたらおかしいんだった…どうしよう…」
桃「……はい、これ」
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シャミ子「…えっ、これは」
桃「誘ってくれた分のお返しと、クリスマスプレゼントも兼ねて。 まあこんな事だろうと思ったし、ここで開けてよ」
シャミ子「……これは……ニット帽?」
桃「角を隠さないと行けないでしょ? それでも角の部分は膨らむと思うけど、見えなければ髪型としか思われないだろうし」
桃「それに…シャミ子はふわふわしてるから、こういうふわふわもこもこな帽子が似合うかなって…」ボソボソ…
シャミ子「う、嬉しいです! ありがとうございます! 大事にします! 飾ってくるので家に置いてきていいですか!?」
桃「今すぐ着けなさい! あとしっぽもしまう!」
ーーーーーーーーーーー
ガヤガヤ…ゴチャゴチャ…
シャミ子「うわっ……凄い人…」
桃「まあ、都心の方はいつもこんな感じだよ。 シャミ子はこっちの方に来たの初めてだよね?」
シャミ子「はい…噂には聞いてたけど、こんなになんて……おかーさんが都会は怖い所って言ってた理由が分かりました…」
桃「私もパソコンのパーツ見る時くらいしかこっちまで来ないしね」
ドドドド…
シャミ子「あっ、うわっ……あわわわ、人に流される…初めての経験…!」
桃「っ、シャミ子っ!」
ギュッ
シャミ子「……ぁ」
シャミ子(て、手を握られて…)
桃「人ごみは慣れてないと危ないから、ちゃんと気をつけて」
シャミ子「は、はい…すみません…」
桃「……仕方ない、この中をシャミ子に普通に歩かせる訳にもいかないし、このままこの手を離さないでおいて」
シャミ子「はい!?」
桃「シャミ子は小さいし危なっかしいから、私が手を握ってるよ」
シャミ子「えっ、えっ…」
桃「ほら、ちゃんと握っておいて。 シャミ子一人になったら迷子センターの場所もわかんないでしょ?」
シャミ子「は、はぃ……」カァァァ
テクテク…
桃「……シャミ子の手、小さくて柔らかいね」
シャミ子「なっ、何言って…!」
桃「あ、いや…握っててちょうどいいなとか……ごめん何言ってるんだ私」
桃「……私の手は、普通の子より大きいし、ずっとステッキ握って戦ってたし、あんまり気持ち良くないかもだから。……まあ今でもダンベル握ってるのもあるけど」
桃「固かったりゴツゴツして気持ち悪かったりするかも知れないけど、しばらく我慢して欲しい」
シャミ子「……そんなことないです!」
シャミ子「桃の手は、いつも私を助けてくれる頼もしい手です! だから、気持ち悪いとか我慢とか、そんなの全然ないし、むしろ嬉しいです! 気持ちいいです! あとちょっといい匂いがします! だからそんなこと言わないでっ!」
桃「シャミ子!?」
「ヒソヒソ…」
「どうしたのかしら大声出して…」
「まさか告白…?」
シャミ子「……って、あえ、えっと」カァァァ
桃「……い、行こうかシャミ子…」カァァァ
シャミ子「はい……」
桃「……こっちは周りに人がいっぱいだから、大きな声出したら注目の的になるし気をつけよう」
シャミ子「そうですね…」
桃「…でも、嬉しかった。 ありがとうシャミ子」
シャミ子「は、はい…」
シャミ子(浮かれて恥ずかしいこと言ってしまった…)テレテレ
桃「……」テレテレ
ーーーーーーーーーーー
桃「こういうイベントの時期は人が集まるから、悪いまぞくが悪さしないか見張りをする魔法少女も多いんだよ。 目立たないよう気をつけないと…」
シャミ子「はい…気をつけます」
桃「……それで、この広場でいいんだよね? ツリーもあるし」
シャミ子「はい、といってもこの敷地一帯にいろんなイルミネーションがあって、ここ以外もいろんなところを回れるみたいです」
シャミ子「それで、ここのツリーの点灯を見てから、色々回って見ようかなって」
桃「もうすぐライトアップの時間だね、そろそろ……」
パッ
パッ
パアア……
シャミ子「……わぁ……」
桃「……」
シャミ子「わぁ……綺麗…」
桃「……そうだね」
シャミ子「こんなに綺麗なツリー初めて見ました…」
桃「……そうだね」
シャミ子「……ほんとにそう思ってます?」
桃「えっなんで?」
シャミ子「だってずっと私の顔見てて、イルミネーションは見てないじゃないですか」
桃「ああ、うん……ごめん」
シャミ子「…桃は、こういう綺麗なイルミネーションとか…見たことあったんですか?」
桃「え?」
シャミ子「あ、その…前に誘った時に『人が多い』とか『なんか浮わついてる』とか、そういえば見てきたように言ってたなって」
桃「……まだ小さい時に、姉とね」
桃「姉は私を楽しませようと連れてきてくれたんだけど……賑やかなのとか浮わついてる雰囲気とか、得意じゃなかったし、わがまま言ってすぐ帰っちゃったんだよね」
桃「あの時、わざわざ連れてきてくれたのにさ。 食わず嫌いせず楽しんでれば、姉も喜んでくれたと思うし……最初乗り気じゃなかったのはそういうこともあって」
シャミ子「……」
桃「…あ、ごめん。 こんな時にする話じゃなかった。 シャミ子もせっかく連れてきてくれたのに」
シャミ子「じゃあ、今楽しみましょう!」
桃「……え」
シャミ子「桜さんは私の中にいますから、桃が楽しんでればきっと伝わるし、今度は喜んでくれるから!」
桃「うん……そうだね。 ありがとう」
シャミ子「ほら、ちゃんと見てください! こんなに綺麗なんですから!」
桃「う、うん…」
シャミ子「…すごいです…感動です」
桃「……しゃ、シャミ子の方が綺麗だよ…」
シャミ子「んぅ!?」
桃「……こういうの言うとシャミ子喜ぶかなと……やっぱり忘れて」
シャミ子「あ、ありがとうございます…」テレテレ
シャミ子「……私も…桃の方がかわいいと思います」
桃「…? かわいい…? イルミネーションってかわいいの比較対象なの?」
シャミ子「えっ、かわいくないですか? キラキラフワフワして。 まあベクトルの違うかわいいですけど。 かわいさパワー的には桃の方が上です!」
桃「そ、そっか……まあ、ありがとう……?」
シャミ子「………わぁ」キラキラ
ガヤガヤ…イチャイチャ…キャッキャ
桃「…………」
桃(わかってたけど……周りはカップルばっかりだな。 …落ち着かない)
桃(……いやいや、変な期待はしないと決めてたはず! あくまで周りは周りだから!)
シャミ子「テレビでしか見たことなかったけど…大きいところのイルミネーションって、こんなに綺麗なんですね…」
シャミ子「私…桃と来れて良かったです」ピトッ
桃「…!」ドキッ
桃(こ、ここで肩を寄せてみたり……?)
桃「しゃ、シャミ……」ドキドキ…
シャミ子「あ、あそこのオブジェも綺麗です! あっち行きましょう!」
桃「……うん」
桃(まあ……幸せそうだしいいか)
桃(シャミ子の幸せそうな顔見れるのが、私は一番幸せだし)
シャミ子「そろそろ違うところ回ってみますか?」
桃「そうだね、他のところも行ってみようか。 後でレストランも行くんだよね?」
シャミ子「はい、ミカンさんが良さそうなところを調べてくれたんです。 なにやらイルミネーションを見ながらディナーが堪能できるとか!」
桃「回ってからレストランね、しばらく歩くことになるのかな。 場所はよく分からないから案内はお願いするね」
シャミ子「はいっ…えへへ…」ギュッ
桃「…!? なんで手を繋いでるのかな?」
シャミ子「場所は私が知ってますから! さっきは桃が手を引いてくれたので、今度は私の番です!」
桃「そ、そっか……うん、まあ、そっちの方がいいか……」テレテレ
シャミ子「ほらほら、こっちですよこっち! とりあえず道順に行きましょう!」
桃「ちょっ、引っ張らないで……もう」
桃「……ふふっ」
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ーーーーーーーーーー
シャミ子「そろそろ、ライトアップの終了時間ですね」
桃「……もうそんな時間か」
シャミ子「楽しい時間はあっという間って言いますしね」
桃「けっこう遅くまでいたね。 ……じゃあ、そろそろ帰ろうか」
シャミ子「そうですね。 名残惜しいけど、おかーさん心配しちゃいます」
シャミ子「桃……その、今日は、楽しんでくれましたか?」
桃「え?」
シャミ子「本当は乗り気じゃないところを誘ったのは私だし……楽しめばいいなんて言ったけど、うまくできてたかなって」
桃「……シャミ子、今日は──」
ドンッ!
シャミ子「わひゃっ!」
「あ、すんません」
シャミ子「いたた、ぶつかっちゃいました…身長低いと人ごみは大変です」
桃「……ったくあの人どこ見て歩いて……」
桃「……って! シャミ子!帽子が!」
シャミ子「えっ? ……ああっ!?」
「角?」
「角付けてる…」
「飾りにしては立派な…」
シャミ子「あ、ええ、っと……これは……その…」アタフタ
シャミ子「……く、クリスマスだからトナカイの真似をしたかったけど、トナカイの角が売り切れてたので巻き角で妥協しました!…みたいな……あはは…」
桃「っ! ほら被って! 離れよう!」グイッ
シャミ子「あわっ…はっ、はい…!」
桃「帽子被ったね? 担いで行くから!」ダッ
シャミ子「えっ、ちょっ、これお姫様抱っこ…むしろ目立つやつ!」
シュバババ……
「……いまの、魔族…!」
ーーーーーーーーーーー
桃「ふぅ、とりあえず人気のないところまで来れた」
シャミ子「今のウソでごまかせたでしょうか…?」
桃「いや流石にムリだよ…まあ、写真取られた訳でもないし、ちょっとした噂程度で済むはずだけど」
桃「それでも早くこの辺りは離れた方がいいかも。 このまま駅まで行って帰ろう」
「わざわざ誰もいない所に逃げ込んでくれて助かるわ」
シャミ子「えっ…?」
桃「魔法少女……見られてたか」
「魔族がこんな時にノコノコと、街中まで出てくるなんていいご身分ね? 」
シャミ子「え、えっ…まぞくって街中歩くだけでアウトなんですか?」
桃「それなら、ちょうど帰るところだから。 用もないし、そこ通してくれないかな?」
「魔族がわざわざ出て来て、どんなことをしでかすつもりだったの? どうせ悪さでもするつもりだったんだろうけど」
桃「聞く耳なしか……面倒だな」
シャミ子「え、え、どうなるんですか」
桃「黙らせるしかない」
シャミ子「過激! 別にそんなことしなくても…! 私たちはケンカする理由ないし…」
桃「そうは言っても、あっちはやる気みたい」
シャミ子「で、でも…」
桃「大丈夫、ケガとかはさせないから。向こうもね」スゥ…(変身)
シャミ子「あっ、かっこいい! 変身しながら言うとすごい頼もしい! もう一回言ってやって!」
桃「言ってる場合じゃないよね? 向こう待ってくれないよ?」
「え、あんたは魔法少女なの? でもそれにしては、なんか衣装が黒いけど…?」
桃「ほら、こっち来て、危ないから」
シャミ子「あ、はい」
桃「出来るだけ離れないで、体を寄せて。 その方が守りやすい」
シャミ子「こ、これくらいですか?」ピトッ
桃「もっと寄って、体ごとくっつく位でいい」 グイッ!
シャミ子「うわぁっ……! えっ、これ、もう抱きついて…」カァァァ
(イチャイチャしてんじゃねーよ)
「……あんた、なんで魔族なんかを守るわけ?」
桃「そんなの決まってる。この子は私にとって…」
シャミ子「!! わ、 私にとってっ!? 」ドキドキワクワクソワソワ
桃「……やっぱり恥ずかしいから言わない」
シャミ子「えーっ!? 言ってくださいー!」
桃「だめ。 教えません」
シャミ子「ここはかっこよくビシッ! と決めるとこじゃないですかー!」
「あー! 戦う時にイチャつくなイライラするから!」
「よりによってクリスマスに見せつけやがって! 速攻で倒してやる…!」イライラ…
シャミ子「あわわ…なんか余計な逆恨みを提供してしまいましたよ!?」
桃「……こっちもさっさと終わらせたいかな。 もう夜も遅いし、この子にこれ以上、余計な心配かけたくないし」
「言ってくれるっ…!」
シャミ子「大丈夫ですよね? 街中で流血沙汰になったら光闇以前に警察案件ですよ?」
桃「大丈夫、その辺の過激派一人ぼっち少女に負けるわけないでしょ? ぼっちなんかに。 クリスマスぼっちなんかに。ぼっちおつ」
「ああっ!? お前ら潰すっ! リア充爆散しろっ!!」ダッ!
桃(ちょろいな…)
「食らえッ!」
桃「見切った」
トスッ…(手刀)
「あ゛……」バタッ
シャミ子「……え? 終わり…?」
桃「ほら、大丈夫って言ったでしょ? 気絶させただけだけだから。 この人はケガもしてないし、傷も残らない」
シャミ子「それにしても一瞬でしたね…流石です桃」
桃「なんかイライラしてたらしいから、軽く煽れば簡単に乗っかってきそうだなって。 予想通りで助かった」
シャミ子「…桃は戦略までまぞく向きだと思います」
桃「ともかく、これでもう安心だね」(肩を抱き寄せたまま)
シャミ子「そ、そうですね…」(抱きついたまま)
桃「……」
シャミ子「……」
桃「……あの、シャミ子? なんか近くない?」
シャミ子「桃が抱き寄せたんじゃないですか!?」
桃「そ、そうだったね……ごめん」
シャミ子「……私は、もう少し、このままでも」
桃「えっ…そ、そっか…? じゃあこのまま駅まで…」
桃「……あ」
シャミ子「? どうかしました?」
桃「……終電過ぎてる」
シャミ子「えっ」
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桃「ホテル…ここしか空いてなかったね…」
シャミ子「ラブの付く方しかなかったです…」
桃「それも満室だらけだし…クリスマス効果か…」
シャミ子「生々しいですね…」
桃「…し、仕方ないんだよ? カラオケとかネカフェだと見回りが来て学生は補導されたりするらしいし、ここなら見回りできないだろうし!」
シャミ子「わ、わかってます! やむ無しです!」
桃「とにかく、明日の朝にまっすぐ駅まで行って帰ろう…」
シャミ子「そうですね…」
桃「そ、それじゃあ……お風呂にも入ったし……寝ようか」
シャミ子「えっ」
桃「えっ」
シャミ子「…な、なんでもないですよ? 早く寝ましょう?」
桃「そ、そうだね?」
桃(……いや、まさかね……)
桃「電気消すね」
シーン…
シャミ子「……」
桃「……」
シャミ子「……桃」
桃「ん? 何?」
シャミ子「…今日は、楽しんでくれましたか?」
桃「え?」
シャミ子「さっさ聞きそびれたので……トラブルもあったけど、私はとっても楽しかったです」
シャミ子「町の外まで出てくるの、何事もなかった訳じゃないけど……桃がいてくれたから、はじめてでも安心できたし、一緒なのが桃で一番良かったって思います」
桃「……そ、そっか」
シャミ子「ふふっ、全部桃のおかげです」
桃「……私も、さっさ伝えそびれたね」
桃「シャミ子、その…今日はありがとう」
桃「クリスマスって一人でいたくて、誘いとか断ってたけど、ほんとは羨ましかったんだ。 こんなに寒くて、私は一人なのに町は盛り上がってて…勝手に避けてたんだ」
桃「でも、今日のデー……お出かけは、綺麗なイルミネーションとか、賑やかな周りとか、それもすごく楽しかった。 さっきは焦ったけどね」
桃「シャミ子と一緒にここまで来れて良かったって、本当に思ってるよ」
シャミ子「桃……えへへ…桃が喜んでくれて良かったです、勇気出して誘ったかいがありました」
シャミ子「でも、あの時は私も本当に焦りました…桃がいなかったらどうなってたか…」
桃「うん、守れてよかったよ。 …また何も知らないまま、大切な人がいなくならなくてよかった 」
シャミ子「多分、桃が一緒じゃなかったら、そうなってたかもしれません」
シャミ子「だから……デートの時はまた、一緒に来てくださいね?」
桃「うん、喜んで……え、デート?」
シャミ子「…ち、違いますか?」
桃「……ううん、違くない、と思う」
シャミ子「……」
桃「……」
シャミ子「あの……桃」
シャミ子「私が、クリスマスに桃を誘ったのは──」
ーーーーーーーーーーー
シャミ子「やっと帰りつきました……外泊なんて初めてです」
桃「体弱かったもんね。 連絡したとはいえ、二人とも心配してるよね…」
ガチャ
清子「あらあら優子、お帰りなさい…うふふふ」
良子「それに桃さんも、玄関まで見送るなんて…うふふふ」
シャミ子「……心配どころか生暖かい視線がお出迎えなんですが」
桃「……」
良子「良こういうの知ってるよ! 朝帰りって言うの! 本で見た!」
シャミ子「少なくとも小学生の読む本で出てくる単語じゃない」
清子「この年で泊まりだなんて、血は争えませんね……かくいうお母さんも若い頃、クリスマスの夜はお父さんと…」
シャミ子「親のその辺のことってすごく聞きたくない!」
清子「でも親としては、流石に外泊については前もって伝えてもらった方が助かります。 まあ桃さんが一緒ということで不安はなかったですけれど」
清子「次の外泊はちゃんと伝えてからにしてくださいね」
シャミ子「いや伝えてからって……自己申告してるみたいでなんだか…」
清子「桃さん、優子のことをよろしくお願いしますね。 桃さんだからこそ、町の外にいても任せられるのですから」
桃「は、はい……わかりました。また、そのうちある……と思いますし」
シャミ子「桃!? 確かにそうかとですけど!」
清子「…うふふふ」
良子「…うふふふ」
シャミ子「う、うぅ……」カァァァ
桃「……」テレテレ
頑張れ二人とも!
この後は一緒に年越しして、一緒にお正月だ!
おわり
これは良い非童貞魔法少女
都心近いしそんなデートもアリなはず
イケメンもんもが素晴らしい
引用元: http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1577285930/