(*ばんだ荘・玄関)
シャミ子「ゲホッ、ゲホッ…桃、おはようございます…」フラフラ
桃「大丈夫? あんまり顔色良くないよ? 今日は休んでる?」
シャミ子「いえ、大丈夫です… 昨日よりは調子いいし、最近休みがちなので、今日は登校しようと思います」
桃「そっか、でも無理しないで。気分悪くなったらいつでも言ってね」
シャミ子「はい、ありがとうございます…」フラフラ
桃「やっぱり休んだほうがいいんじゃない?」
シャミ子「だ、大丈夫です…!」フラフラ…
桃(……仕方ない、今日もするか)
桃「よいしょ」(お姫様だっこ)
シャミ子「ちょっ、桃!?」
桃「学校休みたくないんでしょ? 今日は私が連れていくから」
シャミ子「…お願いします……」カァァァ
(*通学路)
「ねえ、あれ…」
「千代田さんと吉田さんだ…またお姫様だっこで登校してる…」
シャミ子「…やっぱり周りの視線が気になります、というか普通はせめておんぶでは?」
桃「仕方ないんだよ。おんぶだとシャミ子がバランス崩したら危ないし、私が両腕だけで一方的に抱えるこっちの方が安全」
シャミ子「安定感が筋肉に裏打ちされてる……私と宿敵のパワーバランスがあまりにも取れてない」
桃「今は共闘中だから気にしなくていいよ。それよりもどう? このまま学校いけそう?」
シャミ子「大丈夫です…すんすん……さっきよりは良くなってきました」
桃「やっぱり顔色は良くないな…」
シャミ子「…すんすん……くんくん……」
桃「…シャミ子? 何してるのかな?」
シャミ子「桃の匂い嗅いでるとなんだか落ち着く気がします。 こうしてると桃が近いから調子も良くなったのかも」
桃「やめようか」
(*学校・下駄箱前)
桃「ほら、下駄箱ついたよ。 もう大丈夫?」
シャミ子「平気です、教室くらいは歩いて行きます」
シャミ子「それに学校の中でもお姫様だっこはちょっと…」
桃「ん? 必要ならする?」
シャミ子「だ、大丈夫です! というか桃はなんでそんなに抵抗ないんですか」
桃「私が抵抗あったら今日のシャミ子学校これてないよ?」
シャミ子「そうかもですけど! 周りの目とか、噂にもなるかもだし……」
桃「シャミ子がしたいと思ったこと、私は手伝ってるだけ。周りなんて関係ないよ。 どう思われたって別にいいし」
桃(シャミ子とそういう噂になっても悪い気しないし)
シャミ子「なっ!/// きさまっ!そういうとこだそ……っ、ゲホッ、ゲホッ…」
桃「ああほら大きな声出すから…」
(*D組教室)
「ここのこれがこうなって~」
シャミ子(桃があんなこっ恥なこと言うせいで授業に集中できません)
シャミ子(「周りなんて関係ない」とか桃かっこい…じゃなくて! )
シャミ子(そりゃ助けてもらってるわけだけど…)
シャミ子(まあ桃とそういう噂になっても悪い気はしな……でもなくて!)
シャミ子(桃は私のためにいろいろしてくれて、いっつも助けてくれて……私は助けてもらってばっかりで)
シャミ子(お返しできることなんて全然ないのに、それでも眷属になんて…)
シャミ子(あの時、フラフラになりながらなんとか頑張って「眷属になれ」なんて伝えたけど…できるのかな……ほんとに……)
シャミ子(あれ……なんか…頭痛い……)
「シャドウミストレスさん? どうかしましたか?」
シャミ子「ゲホッ…ゲホッ……」
シャミ子(あ…目眩してきた……グラグラする……止まらな……息できない……)
シャミ子(落ち着かなきゃ…落ち着かなきゃ……気持ち悪い……喉くるし……)
「大丈夫ですか!?」
ミカン「また発作出たみたい…保健室に」
杏里「私連れてくの手伝うよ」
シャミ子(どうしよう、どうしよう……みんな心配してる……どうしよう…なんとかしないと……)
ガラッ!
桃「シャミ子! 大丈夫!?」
「え、A組の千代田さん…?」
シャミ子「あ…も、も……」
桃「安心して、もう大丈夫だから。ほら、行こうか」(お姫様だっこ)
シャミ子(桃…来てくれた……)
桃「シャミ子は私が保健室まで連れていきます。失礼しました」
ガラッ
杏里「…なんでシャミ子がピンチなのわかったんだ?」
ミカン「…というかA組の授業飛び出してきたの…?」
(*保健室)
桃「ほら、ベッドに横になって」
シャミ子「ありがとうございま…す」
桃「ちょっとだけ落ち着いたかな?」
シャミ子「おかげさまでだいぶ治まりました……というかなんで隣のクラスなのにわかったんですか、それに授業中なのに」
桃「それは知らなくていい。 …授業なんかよりシャミ子が体調崩した方がおおごとだし、いつでも来るに決まってる」
シャミ子「もも…」
桃「……」 スッ
シャミ子「って、な、なんで一緒にベッドに入ってるんですか…!? しかも近い…」
桃「…私の匂い嗅ぐと調子いいって言ってたから…恥ずかしいけど。 これで良くなるならいいかなって…」カァァ
シャミ子「あ、ありがとうございます…」テレテレ
シャミ子「くんくん……実際和らいでる気がします…」
桃「そ、そっか…それなら良かった」テレテレ
シャミ子「……私、いつも桃に助けてもらってます」
桃「気にしないで。 一応仮だけど眷属の予定だし」
シャミ子「でも、私はなんにもお返しできてない、頼ってばっかり…」
桃「前に私が風邪ひいたとき、シャミ子は一生懸命看病してくれたでしょ。自分もあんまり調子良くなくてフラフラしてたのにうどん作ってくれたよね。 あの時のうどん本当に美味しかった」
桃(あの時、なんかうっかりで血を取られたけど…結果的にシャミ子の月4万の呪いが解けてよかった。 医療費は別だけどちゃんとした食事が摂れるのは健康に良いし)
桃「そうだ、またご飯作ってよ。調子の良い時でいいから」
シャミ子「そんなじゃ全然釣り合ってない気が…」
桃「私が良いって言ってるんだからいいよ。 それより今は寝ること。 寝付くまでは一緒にいるから」
シャミ子「……はい、おやすみなさい」
桃「うん。 おやすみ」
シャミ子「……ん、ぁ……」
シャミ子(けっこう寝ちゃってた? 今何時だろう)
桃「おはよう、シャミ子」
シャミ子「あ…桃、おはようございます……ってあれ? ずっと一緒にいてくれたんですか…?」
桃「いや、もう放課後だよ。授業終わったから迎えに来た」
シャミ子「あ…そうですか、そうですよね」
シャミ子(ずっといてくれた訳じゃなかった、ちょっと残念…とか言えない)
桃(ずっと授業すっぽかして寝顔見てた…とか言えないな)
桃「軽くだけどトレーニングしてから帰るから。 その前に家まで送っていくよ」
シャミ子「いえ、ぐっすり寝たら体調も良くなった気がするので見学でもしてようと思います」
桃「えっ、でも体調崩してるわけだし大事を取って…」
シャミ子「大丈夫です。何かあったらすぐ伝えますし、桃がいるなら外でも安心です」
桃「…気分悪くなったらすぐ言うんだよ?」
シャミ子(ほんとは…心細いし、一緒にいたいから…なんて)
(*公園)
桃「…………………………」タッタッタッタッ
シャミ子(桃、走ってる姿、綺麗……あんなに速くて、ぐんぐん進んでく…)
シャミ子(私も、同じくらい…なんていかなくても、せめて横に並んでジョギングくらいできたなら……)
シャミ子(…色々、違ってたのかな、他にできることとか、見えるものも……眷属にするのも、もっと…)
シャミ子(…眷属にするならせめて、何かできること、してあげられることが見つけられたら…うーん……うーん?)
~~~~~~~~~~
桃「トレーニング終わったよ。お腹も空いたし帰ろうか」
シャミ子「………」
桃「シャミ子、どうかした? ひょっとして気分悪い?」
シャミ子「あ…すみません大丈夫です、なんともないです」
シャミ子(思い付かないけど、とりあえず今度ご飯を作ろう。 美味しいやつ、桃が喜んでくれそうなやつ)
シャミ子(でも、普段からたびたびやってることだし…他には……なにかないかな?)
(*帰り道)
シャミ子「それで…どうして私は帰り道もお姫様だっこをされているのでしょうか」
桃「さっき倒れたんばっかりなんだし、念のため。 外でまた倒れたりしたら危ないよ」
シャミ子「桃、最近過保護過ぎません? 一応前は私一人で登下校してたんですよ?」
桃「いいから、今は私がいるんだしもっと頼っていい」
近所の人「こ、こんにちはー…?」
桃「あ、こんにちは」
シャミ子「何事もないように挨拶しないで! 恥ずかしいので降ろしてください!」
犬「ワン! ワン!」
シャミ子「わひゃあ!? やっぱり降ろさないで!」
桃「…どっち?」
スポンサーリンク
(*ばんだ荘・桃の部屋)
シャミ子「おじゃまします。 これ、お母さんに作ってもらった夕ご飯のおすそ分けです」
桃「ありがとう、まだ夕飯食べてないから助かるよ。 お母さんにお礼言っておいて」
シャミ子「あの…今日は、ご飯作れなくてごめんなさい」
桃「何言ってるの、流石に病人をこき使うわけないでしょ。 料理は調子のいい時でいいって」
シャミ子「はい…それじゃ、また明日」
シャミ子「……ぁ…」フラフラ
桃「っ! 危ない!」ギュッ
シャミ子「…え……あ、ごめんなさい、ちょっとぼーっとしてました…」
桃「…トレーニングに付いてきたとき、本当は無理してたの?」
シャミ子「えっ、いや、別にそこまでではなくて…ちょーっとだけ体が重いなーとかは思ってたけど…」
桃「おばか! 人より弱いんだからほんの少しでも何かあれば休んでないと! なんで付いてきたの!」
シャミ子「それは…その、なんとなく…です」
シャミ子(一緒にいたかったから…なんて)
桃「……今日は泊まっていきなよ」
シャミ子「えっ?私の家すぐ隣ですけど」
桃「いいから。 もしもの時の対応とかはお母さんから聞いてるし、それに万が一病院に行くようなことになったら救急車を呼ぶより私が運ぶ方が早い」
シャミ子「……」
桃「…流石に過保護がすぎるかな。 ごめん、最近心配性すぎるって自覚はしてる」
シャミ子「いえ、泊まっていきます! せっかくですし」
桃「私がお風呂入ってる間に皿洗いしてくれたんだ…」
シャミ子「他にも出来ることがあれば言ってください」
桃「…無理したらダメだってば」
シャミ子「だって…桃にはいつも助けてもらってるし…これくらいじゃぜんぜん足りない…」
桃(またフラフラしてる…今日は学校にも行ってたし、疲れてるよね)
桃(病弱でずっと苦労してきてるのに、いい子すぎるんだよ…もっとわがまま言ってもいいのに)
桃「……じゃあ、もう遅いし…こっちにきて寝よう」
シャミ子「…え……?」
桃「い、嫌ならいいんだけど…」カァァァ
シャミ子「保健室でも、落ち着くからってしてくれた。……また、してもらってる」
桃「…いや、今度は私がしたいだけだよ。 最近冷えてきたしね。だから…変な遠慮はしないで欲しい」
桃「それに、ここで断られたら私は恥かいただけで終わるんだけど。 シャミ子は私に恥ずかしい思いをさせたいのかな?」
シャミ子「……じゃあ…失礼します」
シャミ子「桃、あったかいです…」
桃「シャミ子はちょっと冷たいね、体冷やしちゃった?」
シャミ子「桃があったかいから、大丈夫……です…」
シャミ子(……いい匂い…それに桃の心臓の音がする…)
シャミ子(やっぱり、安心する…)
シャミ子(しあわせ……)
シャミ子「……ん…ぁ…」ウトウト
桃「今日は学校にも行ったし眠いよね? お疲れさまだね。 …おやすみ、シャミ子」
シャミ子「もも…おやすみなさ……すぅ……」
シャミ子「…すぅ……すぅ……」
桃「もう寝ちゃった。やっぱり疲れてたんだね」
桃(…この子は、病弱でいつも助けられてばかりだからって、負い目でも感じてるのかな。 最近何かと私の手助けをしたがる)
桃(……私だって、助けられてるんだよ)
桃(あの時、『眷属になれ』って言ってくれたよね。本当に嬉しかった。自分だって大変なのに、一生懸命私のこと探してくれて…)
桃(私は、シャミ子がいてくれるだけで、それだけで幸せなんだよ。 これまでの人生で、今が一番幸せだと思うくらい)
桃(だから、もし…ずっと一緒にいてくれたなら)
桃(……一生だって守るからね)
チュンチュン…
シャミ子「ん……っ……」
桃「…おはよう、シャミ子」
シャミ子「あ、おはようございます…」
桃「今日の調子はどう? 少しでも何かある?」
シャミ子「……ちょっと、体がだるくて…」
桃「そっか、じゃあまだ横になってた方がいいね」
シャミ子「…はい」
桃「大丈夫。 今日は休日だし予定もないから…」
桃「…シャミ子が落ち着くまで、ずっとこうしてるし、一緒にいるから」ナデナデ
シャミ子「んっ……あ、ありがとうございます…」カァァァ
桃「うん」ナデナデ
シャミ子(…いつも何かしてもらってばかりなのに、一緒にいてほしいとか、してもらって嬉しいとか、ずるいのかな…)
シャミ子(……でも)
シャミ子(ずっと、桃とこうだったらいいな……)
頑張れシャミ子
ゆっくりでいいから、いつか自分のペースで、自分の気持ちを伝えられるようになるんだ
おわり
おつ
乙
これはできる魔族
最高だったわ