QB「まぞく?」
シャミ子「えっと、光の一族の営業の人ですか……?」
シャミ子「魔法少女の宿敵であるまぞくの家に営業にくるとは……い、いい度胸だな!」ドヤ
QB「君は何を言っているんだい? わけがわからないよ」
シャミ子「わけがわからないのはこっちです! 魔法少女の話なら桃たちのほうに聞いて下さい」
桃「話は聞かせてもらったよ」ガラッ
シャミ子「桃!? いつの間に部屋の中に」
桃「ううん別に。ちょっとシャミ子をストーキングしてただけだから。気にしないで」
シャミ子「さらっと怖いこと言わないでください!」
QB「そんなことより僕と契約の話をしよう」
桃「そんなことよりシャミ子が可愛すぎる。シャミ子、私と契約しよう」
シャミ子「何の契約ですか!? 何でみんな私と契約したいんですか! そもそも契約って何ですか!」
良子「契約っていうのは法的にいえば、一方当事者の『申込み』の意思表示に対し、他方当事者の『承諾』の意思表示によって成立する『法律行為』のことだよ、お姉」
シャミ子「なるほどそれは知りませんでした。ってそういう問題じゃないんです!」
シャミ子「白い変な生き物が現れて、いきなり私に契約を迫ってきて……。桃も何だか今日は様子がおかしいし」
良子「じゃあ消費生活センターに相談したらどう? 未成年が安易に契約したら後悔することが多いよ」
シャミ子「なるほど、その手がありました! さっそく電話を」
QB「その必要はないね」
桃「シャミ子、インキュベーターさんから事情は聴かせてもらった。シャミ子は無理やり契約しなくても大丈夫みたいだよ」
シャミ子「本当ですか。ありがとう桃! 電話代が節約できて良かったです!」
QB「僕と契約してくれれば、君たちの願い事を何でもひとつ叶えてあげるよ。どんな願いだって構わない」
シャミ子「ど、どんな願い事でも……?」
QB「闇の一族の末裔である君の家計には金運の呪いがかけられているそうだね。君が願えば、その金運の呪いも解けるかもしれない」
シャミ子「そ、そうなったらもうお金に困ることなく……ごはんもお腹いっぱい食べられるってことですか」
QB「そうだよ」ニッコリ
シャミ子「ち、ちょっと考えさせてください」
良子「だめだよお姉。『かもしれない』って、断言してるわけじゃなし。この人、契約書も見せてくれないから怪しいよ」
シャミ子「確かに……。ナイスです良! あやうく騙されるところでした」
桃「キュゥべえ、ちょっと聞きたいんだけど。『君たち』って言うからには私も契約できるって考えていいのかな?」
シャミ子「桃? 何言ってるんですか、桃はもとから魔法少女じゃないですか?」
桃「うん。だから二重契約は可能かってこと」
QB「前例はないね。けれど、光の一族との契約の内容に抵触しない限り、僕と君との間の契約締結も不可能とはいえないだろう」
桃「そう」
シャミ子「桃、どうしたんですか? 何でそんなに乗り気なんですか?」
桃「いや、今の契約だとまぞくを倒してポイントを貯めないと大きな願いは叶えてもらえないし」
シャミ子「あ、そういう設定でしたね。え、で、だから?」
桃「…………」チラ
シャミ子「桃?」
桃「ゴクリ……どんな願いでも叶えてくれるんだよね」
QB「君が願うならね」
シャミ子「何ですか今の間は!? 桃の顔がちょっと怖いです!」
シャミ子「待ってください桃! これはきっと何かの罠です! タダで願いを叶えてくれるなんて怪しすぎます。絶対裏があると思います」
桃「あ、うん。契約したら魂を引き抜かれて宝石にされる上に魔女っていう怪物と戦わなきゃいけないらしい」
桃「しかも魔女は穢れを溜めていった魔法少女のなれの果てなんだって。さっき聞いた」
シャミ子「ふぁっ!? 何ですかその怖すぎる契約!」
桃「でも私もすでに体はエーテルだし。今の魔法少女としての力はシャミ子のせいで弱まってる」
シャミ子「私のせいですか!? あ、私のせいですね……ごめんなさい全部私が悪いです」
桃「シャミ子は悪くないよ」
シャミ子「どっちなんですか!?」
桃「とにかく、キュゥべえと契約して新魔法少女として新たな能力を手にすることができれば、それはマイナスにはならないと思う」
シャミ子「マイナスですよっ!!」
ぎゅうっ
桃「シャミ子……?!」
シャミ子「桃、もっと自分のことを大事にしてください。桃の願いって、そんなに大きなものなんですか? 町を守ることですか?」
桃「いや、町というか……その、……シャミ子と」
シャミ子「私と? 私が協力すれば何とかなる願いなんですか?」
桃「え、それは……なんとかなる、かもしれないけど。でも、シャミ子はきっと嫌がるだろうし」
シャミ子「そんなことありません! 私、桃のことなら……桃のためなら何だってします!」
桃「シャミ子……」
シャミ子「だからお願いです、桃。変な営業の人の口車に乗せられて契約するのはやめてください……」
桃「…………。わかった、シャミ子の言う通りにするよ」
シャミ子「桃……」
桃「キュゥべえ、そういうことだから。今回の契約の話はなかったことに――あれ?」
シャミ子「キュゥべえさん、どこか行っちゃいましたね」
清子「夕飯のお鍋ができたわよー」グツグツ
良子「この白身のお肉、やわらかくておいしいね」
清子「あらそう、よかったわ」
シャミ子「……こんなにおいしい動物のようなお肉を食べたのは久しぶりです。おかーさん、どこで買ってきたんですか?」
清子「ああ、お店ではお肉は高すぎて買えなかったから、家の中で捕まえて調理したのよ」
シャミ子「家の中で? 白い肉? あっ……」
桃「シャミ子は悪くないよ。キュウべえが悪いんだよ」モグモグ
シャミ子「キュゥべえさん……ごめんなさい。あっ……でもやっぱりおいしい」
頑張れシャミ子!
キュウべえを食べ尽くして吉田家の家計を救うんだ!
(おしまい)
引用元: http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1575313209/